「いいな、あの一言」と思ったことはありませんか?
会議が終わった直後、廊下ですれ違いざまに「さっきの判断、よかったと思います」と言われた。
たったそれだけのことなのに、その日一日の疲れが半分くらい飛ぶような感覚になる。
不思議ですよね。人事評価にも書かれない。給料も変わらない。なのに、会社の評価票より何十倍も記憶に残る。
今日は、その「現場の一言」を意図的に増やす方法の話をします。
📌 この記事の結論
公式の評価制度を変えるのは難しい。でも、現場の人間同士でこっそり褒め合う「非公式な称賛文化」は、今日から始められる。
「今の判断、最高でしたね」という一言が、会社の評価票より何倍も士気を上げることがある。褒め言葉は、ルートが非公式でも効果は本物です。
「褒め言葉の闇取引」とはどういう意味か
少し物騒なタイトルだと思った人もいるかもしれません。笑
「闇取引」という言葉を使ったのは、「公式ルートを通らない、現場だけで完結する称賛のやりとり」というイメージからです。
人事評価には記録されない。上司を経由しない。全体会議で共有もしない。
でも、確実に相手の心に届く。
それが「褒め言葉の闇取引」です。
「闇」と言っても、怪しいことでも違反でもありません。「公式の仕組みに頼らずに、現場の士気を自分たちで上げる」という、ちょっとだけ逆説的な動き方のことです。
むしろ、これは組織の中で一番コスパのいい改善活動だとぐれは思っています。
なぜ公式の評価制度だけでは「士気を上げる」のが難しいか
多くの職場の評価制度には、構造的な限界があります。
- 1タイムラグが大きすぎる評価面談は半年に一度、多くても年に二度。「昨日の判断がよかった」という瞬間の称賛が、半年後の面談で伝わるはずがない。人間の記憶はそこまで正確じゃないし、評価者だって忘れます。褒めるべき瞬間に褒めることができないのが、公式評価の一番の弱点です。
- 2定量化しにくい「良さ」が評価されない「場の空気を整える一言」「後輩が迷っているときに気づいてくれた」「チームが詰まったとき冷静に整理してくれた」——こういう仕事は評価シートに書きにくい。でも現場には確実に価値があります。数字にならない貢献ほど、見えにくく、報われにくい。
- 3上司のフィルターがかかる評価は多くの場合、上司という一人の人間を通過します。その人との相性、その人の観察力、その人の主観。どれだけ良い仕事をしても、上司に見えていなければ評価に反映されにくい。現場で誰もが知っていることが、評価者だけ知らないケースもあります。
- 4「評価されるための行動」が生まれてしまう公式評価だけに頼ると、「評価されやすいことをやる」という発想が生まれます。本当に必要なことより、目立つことが優先されることも。現場の本当の貢献とズレが生じやすくなります。
こういった限界があるからこそ、現場の人間同士での非公式称賛が、補完的に機能します。
非公式称賛の具体的な始め方
方法①:チャットで「今の判断、よかったです」と送る
メールより軽い。口頭より記録に残る。
チャットツール(Slack・Teams・LINEWORKSなど)での一言称賛は、受け取った相手が後から見返せるという強みがあります。
落ち込んでいるとき、自信をなくしているとき、過去にもらった称賛のメッセージを見返すと立ち直れることがあります。それくらい、テキストで残った言葉には力があります。
ポイントは「具体的に」送ること。
「よかったです」だけより、「さっきの〇〇の判断、あの状況であそこまで冷静に動けるのすごいと思いました」のほうが何倍も伝わります。
「いいな」と思った瞬間に、30秒でチャットを送る。これだけで、相手の一日が変わることがあります。
方法②:「さっきのあれ、よかったですよ」を口頭でこっそり伝える
大げさじゃなくていいです。
会議が終わった後に廊下で一言。作業が一区切りついたときにデスク越しで一言。
「さっきのプレゼンの〇〇の部分、わかりやすかったです」
「あの場面での判断、自分だったらあそこまで冷静に考えられなかったと思います」
具体的であればあるほど、相手に届きます。「どこが」「なぜ」良かったかを一言添えるだけで、お世辞ではなく本気の称賛として受け取ってもらえます。
方法③:第三者に「あの人、すごいんですよ」と言う
これ、意外と効果が高い方法です。
本人に直接言うより、第三者経由で「ぐれさんがあなたのこと褒めてたよ」と伝わるほうが、信憑性と嬉しさが増すことがあります。
直接言われると「お世辞かな」と思いやすいのに、第三者経由だと「本当にそう思っているんだな」と受け取られやすい。人間の心理の面白いところです。
特に後輩や年下の人は、自分の評判が自分の知らないところで良い形で広まっていることを知ると、強い自信につながります。
方法④:「〇〇さんのおかげで助かりました」を言う
褒め言葉は「すごいですね」系だけじゃなく、「助かりました」系も強力です。
「あのとき声をかけてくれたおかげで、スムーズに進みました」
「〇〇さんが先に確認してくれていたから、自分は安心して次に進めました」
「助かった」という言葉は、相手が「自分は誰かの役に立った」という感覚を持てる最短ルートです。人は「貢献できた」と感じることで、最も強くモチベーションが上がります。
「先に褒める人」が現場の空気を変える
職場の空気は、誰かが作っています。
「何か問題があったら指摘する」文化を先に作る人もいれば、「いいことがあったら声をかける」文化を先に作る人もいます。どちらが先に動くかで、その職場のトーンが決まります。
批判より先に称賛を置く人が一人いるだけで、職場全体のコミュニケーションのトーンが変わっていく。
「その先に動く人」に、あなたがなればいい。
これ、役職も経験年数も関係ありません。新入社員でも、パートでも、ベテランでも関係ない。「先に褒める人」は誰でもなれます。
最初は「なんか恥ずかしいな」と感じるかもしれません。日本の職場文化では、積極的に褒めることに慣れていない人が多いですから。でも、続けていると、自分も相手も慣れていきます。
「褒め文化の最初の一人」になることを、少しだけ意識してみてください。
称賛を「見返り目的」でやらないほうがいい理由
ここで一つ注意点を。
「褒めたら褒め返してもらえる」という計算でやり始めると、相手に伝わります。
下心のある称賛は、なぜか受け取る側に伝わってしまう。そして、伝わった瞬間に逆効果になります。「なんか気持ち悪いな」「おべっかかな」と思われると、称賛どころか信頼を失います。
💡 称賛が「本物」かどうかわかるポイント
「純粋にいいと思ったから言う」称賛は、言葉のどこかに「具体性」があります。どこが、なぜ、どう良かったかが言葉に出てくる。
「計算で言う」称賛は、具体性がなく「すごいですね」「さすがですね」という漠然とした言葉になりがち。
自分が言う称賛に「なぜよかったのか」を添えられるかどうか、チェックしてみてください。
称賛は「与えるもの」として持つのが一番健全です。「もらえるかもしれないもの」として持つと、もらえなかったときに不満になります。
「与えること自体に満足できる人」が、称賛文化を作れます。
褒める側にも「気持ちよくなる」という副産物がある
実はこれ、称賛をする側にも大きなメリットがあります。
人を褒めると、自分も気持ちよくなります。
これは感覚的な話ではなく、脳の仕組みとして説明できます。他者にポジティブな言葉を向けると、自分の脳内でもポジティブな感情が活性化します。
つまり、褒めることは「相手のためだけの行為」ではなく、「自分のメンタルにも効果がある行為」なんです。
しんどい職場でも、意識的に「いいところを見つけて言葉にする」習慣を持っている人は、同じ環境にいながら消耗しにくい。これ、結構大きな差です。
「褒める」という行為は、相手への贈り物であり、自分への贈り物でもあります。
「褒め文化」は最強のコスパ職場改善策
改めて整理すると、非公式称賛文化の魅力はここにあります。
- お金がかからない
- 権限がなくてもできる
- 制度を変えなくていい
- 今日から始められる
- やった側のメンタルにも効く
- 受け取った相手の記憶に長く残る
DXや組織改革のような大きなことは、なかなか個人の力では動かせない。でも「よかったです」の一言は、今日の今すぐ動かせます。
「いい職場を作るのは、制度じゃなくて人だ」という言葉がありますが、その一番手軽な実践が「非公式称賛文化」だとぐれは思っています。
まとめ
- 公式評価制度はタイムラグ・定量化の難しさ・上司フィルターという構造的限界がある
- 現場の人間同士での非公式称賛が、その限界を補完する
- チャット・口頭・第三者経由・「助かりました」の4つのルートで称賛を届ける
- 具体性のある称賛ほど相手に届く。「なぜよかったか」を一言添えることが大事
- 「先に褒める人」が一人いるだけで、職場全体の空気が変わっていく
- 褒める行為は相手だけでなく、自分のメンタルにも効果がある
- お金も権限も不要。今日から始められる最強コスパの職場改善策
今日の帰り際に一人、「よかったです」を届けてみてください。
案外、そこから職場の空気が変わり始めるかもしれないので。
― ぐれ―