現場が疲弊しないための「期待値の調整」

― 人が動きやすくなる環境は、最初のすり合わせで決まる ―

現場が疲弊する理由は、必ずしも「仕事量が多いから」だけではない。
もちろん、仕事量が限界を超えていれば疲れるのは当然だ。
でも実際には、
“期待値のズレ”と“過剰な期待” が静かに現場を追い詰めていく。
私は以前、
とにかく時間に追われる職場で働いていたことがある。

  • いかに早く
  • いかに数を作るか
  • いかに効率を上げるか
    常にこの3つを求められ、
    従業員には「早く終わらないと帰れない」「何としても終わらせる」と言われ続けていた。
    誰もが焦り、誰もが疲れ、
    “終わらせるために働く” という状態になっていた。
    このように、
    現場のキャパシティを超えた期待値が押しつけられると、人は確実に疲弊する。
    そしてこれは、
    「どこまでやればいいのかが曖昧な状態(期待値のズレ)」と同じくらい、
    現場を追い詰める大きな要因だ。
    ここでは、現場が疲れないために必要な「期待値の調整」について、
    実体験とデータの両方からまとめてみたい。

1. 疲弊の正体は「仕事量」ではなく「不確実さ」

心理学の研究では、
人が最もストレスを感じるのは“不確実な状態”だと言われている。

  • どこまでやればいいのか
  • 何を優先すべきなのか
  • どのレベルを求められているのか

    これらが曖昧なまま仕事をすると、
    人は常に「これでいいのかな…」という不安を抱え続ける。
    さらに、
    現場のキャパを超えた期待値 が乗せられると、
    不安に加えて「焦り」が生まれ、疲弊が加速する。
    私がいた職場のように、
    「早く」「もっと」「効率よく」と言われ続ける環境では、
    人は休む間もなく追い立てられ、
    心も体もすり減っていく。

2. 期待値がズレると、現場はこうなる

● 上司
「なんでこれができていないの?」
「言わなくてもわかると思ってた」

● 現場
「どこまで求められてるのかわからない」
「また怒られるかもしれない」
「確認したいけど聞きづらい」

● 過剰な期待があると
「終わらせるために働く」
「帰れないから急がなきゃ」
「誰も余裕がない」

● 結果

  • ミスが増える
  • 余計なやり直しが発生する
  • 現場が萎縮する
  • 離職につながる
    つまり、
    期待値のズレと過剰な期待は“疲弊の連鎖”を生む。

3. 期待値の調整は「最初の5分」で決まる

期待値の調整は、
大げさな会議や資料はいらない。
大事なのは、
最初の5分で“すり合わせる”こと。
● すり合わせるべきポイント

  • どこまでやればOKか
  • 何を優先すべきか
  • どのレベルを求めているか
  • 迷ったら誰に相談するか
  • 期限はどれくらいか
  • 現場のキャパはどれくらいか(←ここが重要)
    「現場のキャパを超えていないか」を確認するだけで、
    疲弊は大きく防げる。

4. データが示す:期待値の明確化は生産性を上げる

海外の調査では、
役割と期待値が明確なチームは、生産性が最大25%向上する
というデータがある。

また、心理的安全性の研究でも、
「何を求められているかが明確な職場ほど、ミスが減り、離職率も低い」
という結果が出ている。

つまり、
期待値の調整は“優しさ”ではなく、
組織のパフォーマンスを上げるための仕組みでもある。

5. 現場が疲弊しない職場は「期待値の調整」を習慣にしている

新人でもベテランでも、
期待値の調整は常に必要だ。
育つ職場は、これを“習慣”にしている。

● 1. 仕事の前に短くすり合わせる
「今日はここまでできればOKだよ」

● 2. 途中で確認する
「今の進み具合で問題ないよ」

● 3. 終わったら振り返る
「ここは良かったね」「次はこうするともっと楽だよ」

この3つを回すだけで、
現場の疲弊は大きく減る。

6. 期待値の調整は「相手を信頼する行為」でもある

期待値を伝えることは、
相手を管理することではない。

むしろ逆で、
相手を信頼しているからこそ、すれ違いをなくすために伝える。

  • 「あなたに任せたいから、最初にすり合わせたい」
  • 「無駄なストレスを減らしたいから、確認しておきたい」

こうした姿勢が、
現場の安心感をつくる。

まとめ

現場が疲弊する理由の多くは、
“期待値のズレ”と“過剰な期待” にある。

  • どこまでやればいいのか
  • 何を優先すべきか
  • どのレベルを求めているのか
  • 現場のキャパを超えていないか

これらを最初にすり合わせるだけで、
現場のストレスは大きく減り、
ミスも減り、
チームの空気が変わる。

期待値の調整は、
特別なスキルではなく、
小さな習慣の積み重ね。

働く人が無理なく力を発揮できる職場が、
一つでも増えていくことを願っている。