― なぜ同じ忙しさでも、疲れる現場と疲れない現場があるのか ―
どの現場にも忙しさはある。
しかし、同じ忙しさでも
- 仕事が回るチーム
- 忙しさに押しつぶされていくチーム
この差はどこから生まれるのか。
その違いを理解するために、まずはある現場で起きた“典型的な例”から見ていきたい。
1. 忙しさが限界を超えた現場で起きていたこと(実例)
ある職場では、現場の通常業務とは関係のない指示が、トップから突然降りてくることがよくあった。
本来なら専門業者に依頼すべき内容や、緊急性のない雑務まで「すぐにやれ」と指示されることもあり、現場の管理者は日常業務と追加業務の板挟みになっていた。
現場としては「後回しにしたい」と判断できる内容でも、
組織の文化として “トップの指示は最優先” とされていたため、調整することも難しい。
結果として、現場の仕事を止めて対応せざるを得ない状況が続き、管理者は深夜まで残業する悪循環に陥った。
部下たちも疲れ切っていて、
「これ以上の仕事はしたくない」という空気が漂っていた。
こうした状況は、特定の会社だけの話ではない。
多くの現場で、同じような構造が繰り返されている。
2. なぜ現場は疲れてしまったのか、根拠から見ていこう
このケースは、心理学・組織論の観点から見ると、いくつかの典型的な問題が重なっていた。
① 判断が多いと人は疲れる(意思決定疲労)
心理学では、人は判断するたびにエネルギーを消耗するとされている。
これは「意思決定疲労(Decision Fatigue)」として知られている。
- どれからやるか
- どこまでやるか
- 現場を優先するか、トップの指示を優先するか
判断が増えるほど疲れ、集中力が落ち、ミスが増える。
優先順位が揃っていない現場ほど、判断の負荷が大きくなる。
② 判断基準が揃わない組織は混乱する(組織文化論)
組織文化の研究では、
価値観や判断基準が揃っていない組織は混乱しやすい とされている。
この職場では、
- 現場は「安全・品質・日常業務」を優先
- 上層部は「トップの指示が最優先」
という矛盾した基準が存在していた。
基準が揃わない組織は、必ず現場が疲弊する。
③ ミスの多くは“環境要因”(ヒューマンエラー研究)
ヒューマンエラー研究では、
ミスの80〜90%は個人の能力ではなく“環境要因”とされている。
つまり、
現場が崩れかけたのは、誰かの能力不足ではなく、環境の問題。
- 無理な指示
- 優先順位の不一致
- 属人化
- 相談しづらい空気
こうした環境が、現場の疲労を加速させる。
④ 不確実さは強いストレスになる(認知心理学)
認知心理学では、
人は「これで合っているのか」という不確実さに強いストレスを感じる。
現場では常に、
- どちらを優先すべきか
- どこまで対応すべきか
- 断っていいのか
といった“正解のない判断”を迫られていた。
これが精神的な疲労を大きくしていた。
3. 忙しいのに仕事が回るチームは何が違うのか
① 優先順位が揃っている
例:
- 安全
- 品質
- 納期
- 効率
この順番が共有されていると、判断が揃い、迷いが減る。
② 「やらないこと」が決まっている
忙しいチームほど、
やらないことを決める勇気がある。
③ 相談しやすい空気がある
迷ったらすぐ聞ける環境は、判断疲れを大幅に減らす。
④ 属人化していない
情報が共有され、誰が休んでも回る。
⑤ 小さな改善が続いている
一気に変えようとせず、
“無駄を1つ減らす”を積み重ねる。
4. 現場を優先する判断は正しいのか?
結論として、
現場の通常管理を最優先にする判断は、組織論的にも心理学的にも正しい。
現場が止まれば、
- 品質が落ちる
- ミスが増える
- クレームが増える
- 結果的に会社全体が損をする
だから、
現場を守る判断は“組織を守る判断”でもある。
問題は、
その判断を支える“組織の仕組み”がなかったこと。
まとめ
忙しいのに仕事が回るチームは、特別な才能があるわけではない。
共通しているのは、
迷いを減らす仕組みと、動きやすい空気。
- 判断が少ない
- 優先順位が揃っている
- やらないことが決まっている
- 相談しやすい
- 属人化していない
- 小さな改善が続いている
これらが揃うと、
忙しくても疲れにくく、仕事が自然と回り始める。