― 指示する側もされる側も気持ちよく働ける職場づくり ―
仕事をしていると、「どう伝えれば動いてくれるんだろう」と悩む場面がある。
強く言えば動くわけでもないし、丁寧に伝えても伝わらないこともある。
でも、マネジメントの本質は“相手を動かすこと”ではなく、
指示する側もされる側も気持ちよく力を発揮できる環境をつくることにある。
ここでは、相手が自然と動きたくなるコミュニケーションのポイントをまとめてみた。
1. 相手の“理解の速度”に合わせる
人によって、理解のスピードも、情報の受け取り方も違う。
早口で説明されると混乱する人もいれば、細かい説明があると安心する人もいる。
大切なのは、
「相手がどのペースなら理解しやすいか」 を観察すること。
- ゆっくり話す
- 結論から伝える
- 例を使う
- メモや図を添える
こうした小さな工夫が、相手の動きやすさを大きく変える。
2. 期待を伝えるときは“短く・具体的に・温度を落として”
「しっかりやってほしい」「もっと頑張ってほしい」
こうした言葉は、実は相手にとって一番わかりにくい。
人が動きやすいのは、
短く・具体的で・落ち着いた言葉。
例:
- 「今日中にAの確認だけお願いしたい」
- 「この部分だけ直してもらえると助かる」
- 「ここまでできていれば十分だよ」
温度を落とした言い方は、相手の緊張をほどき、動きやすくする。
3. 人が動かないときは“理由”を聞く
指示を出しても動かないとき、
「やる気がない」「反抗している」と思いがちだ。
でも、実際には
“動けない理由”があることがほとんど。
相手の状況を理解しようとする姿勢が、
その後のコミュニケーションを大きく変える。
4. 否定ではなく“改善の余地”として伝える
ミスや改善点を伝えるとき、
「ここが違うよ」と言われると、人は心を閉じてしまう。
でも、
「ここをこうするともっと良くなるよ」
という伝え方なら、相手は前向きに受け取れる。
ポイントは、
- 相手の意図をまず受け止める
- 改善点は一つだけ伝える
- 責めるのではなく“次につながる言葉”にする
これだけで、相手の動き方が変わる。
5. 成功体験を一緒に拾う
人が動きたくなるのは、
「できた」「役に立てた」
という実感が積み重なるとき。
- 小さな進歩を見つけて声をかける
- できた部分を具体的に褒める
- 成果を一緒に振り返る
こうした積み重ねが、相手の自信を育て、行動を変える。
まとめ
コミュニケーションは、相手を動かすためのテクニックではなく、
指示する側もされる側も気持ちよく働ける環境をつくるための対話だ。
相手の理解の速度に合わせ、
期待は短く・具体的に伝え、
動けないときは理由を聞く。
その理由が、本人の頑固さではなく“現場のリアル”にあることは少なくない。
実際、指示通りに動かないメンバーがいたとき、
私は「なぜ変えないんだろう」と思いながらも、
どこかで“何か理由があるのかもしれない”という違和感があった。
思い切って理由を聞いたとき、
彼は少し言いにくそうに、
「そのやり方だと間に合わないんです」と話してくれた。
その瞬間、空気が少し変わった。
こちらの中にあった“指示を守らない人”という見方が、
“現場で必死にやっている人”に変わった。
人が動かないとき、そこには必ず理由がある。
その理由を理解しようとする姿勢が、
相手の安心につながり、
結果として「この人の言葉なら動こう」と思える関係をつくる。
そして、できた部分を一緒に拾い、
小さな成功体験を積み重ねていくことで、
指示する側もされる側も、
無理なく、気持ちよく力を発揮できるようになる。
マネジメントは、
人を動かすことではなく、動きやすい環境を整えること。
そのためのコミュニケーションが、
職場を少しずつ、確実に良い方向へ変えていく。